糖質制限を実践している場合、低糖質・高タンパク・高脂質な食生活になる事が多いと思います。
それ自体はなんら問題ないのですが、そこで気になるのはそれ以外の栄養素であるビタミンやミネラルについてではないでしょうか。
今回はその中でもビタミンに焦点を絞って、重要な点について説明して行きたいと思います。
ミネラルについてはこちらの記事をご覧ください。
糖質制限を実践する上で不足しないかどうかと不安になりがちなビタミンとミネラル。 ビタミンに関しては別の記事で詳しく解説しましたので、今回はミネラルについて見て行きましょう。 [sitecard subtitle=関連記事 url[…]
ビタミンとは?
ビタミンとは、生物にとって欠かす事の出来ない栄養素のうち、炭水化物・タンパク質・脂質以外の有機化合物を指す総称です。
ビタミンには以下のような種類があります。
- ビタミンA
- ビタミンD
- ビタミンE
- ビタミンK
- ビタミンB群(B1,B2,B3,B5,B6,B7,B9,B12)
- ビタミンC
この内ビタミンA~Kは脂溶性ビタミンとなっており、水に溶けにくく体外へ排出されづらい性質を有しています。
対してビタミンB群とCは水溶性ビタミンとなっており、水に溶けやすく体外へ排出されやすい性質を有しています。
ビタミンの摂取基準
厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準2020年版」によると、各種ビタミンの一日あたりの摂取目安量(あるいは推奨量)は以下のような範囲となっています。
脂溶性ビタミン(ビタミンA,D,E,K)
年齢 | A(μgRAE) | D(μg) | |
---|---|---|---|
男性 | 1~9 | 400~500 | 3.0~5.0 |
10~17 | 600~900 | 6.5~9.0 | |
18以上 | 800~900 | 8.5 | |
女性 | 1~9 | 350~500 | 3.5~6.0 |
10~17 | 600~700 | 8.0~9.5 | |
18以上 | 650~700 | 8.5 | |
妊婦 | 後期+80※1 | 8.5 | |
授乳婦 | +450※2 | 8.5 |
※1:妊娠後期の妊婦に関しては対象年齢のビタミンA推奨値に+80μgとなる。
年齢 | E(mg) | K(μg) | |
---|---|---|---|
男性 | 1~9 | 3.0~5.0 | 50~90 |
10~17 | 5.5~7.0 | 110~160 | |
18以上 | 6.0~7.0 | 150 | |
女性 | 1~9 | 3.0~5.0 | 60~110 |
10~17 | 5.5~6.0 | 140~170 | |
18以上 | 5.0~6.5 | 150 | |
妊婦 | 6.5 | 150 | |
授乳婦 | 7.0 | 150 |
詳しくはこちらの資料でご確認下さい。
水溶性ビタミン(ビタミンB群、ビタミンC)
年齢 | B1(mg) | B2(mg) | |
---|---|---|---|
男性 | 1~9 | 0.5~1.0 | 0.6~1.1 |
10~17 | 1.2~1.5 | 1.4~1.7 | |
18以上 | 1.2~1.4 | 1.3~1.6 | |
女性 | 1~9 | 0.5~0.9 | 0.5~1.0 |
10~17 | 1.1~1.3 | 1.3~1.4 | |
18以上 | 0.9~1.1 | 1.0~1.2 | |
妊婦 | +0.2※2 | +0.3※2 | |
授乳婦 | +0.2※2 | +0.6※2 |
年齢 | B3(mgNE) | B5(mg) | |
---|---|---|---|
男性 | 1~9 | 6~11 | 3~6 |
10~17 | 13~17 | 6~7 | |
18以上 | 13~15 | 5~6 | |
女性 | 1~9 | 5~10 | 4~5 |
10~17 | 10~14 | 6 | |
18以上 | 10~12 | 5 | |
妊婦 | +0※2 | 5 | |
授乳婦 | +3※2 | 6 |
年齢 | B6(mg) | B7(mg) | |
---|---|---|---|
男性 | 1~9 | 0.5~0.9 | 20~30 |
10~17 | 1.1~1.5 | 40~50 | |
18以上 | 1.4 | 50 | |
女性 | 1~9 | 0.5~0.9 | 20~30 |
10~17 | 1.1~1.3 | 40~50 | |
18以上 | 1.1 | 50 | |
妊婦 | +0.2※2 | 50 | |
授乳婦 | +0.3※2 | 50 |
年齢 | B9(mg) | B12(mg) | |
---|---|---|---|
男性 | 1~9 | 90~160 | 0.9~1.6 |
10~17 | 190~240 | 1.9~2.4 | |
18以上 | 240 | 2.4 | |
女性 | 1~9 | 90~160 | 0.9~1.6 |
10~17 | 190~240 | 1.9~2.4 | |
18以上 | 240 | 2.4 | |
妊婦 | +240※2 | +0.4※2 | |
授乳婦 | +100※2 | +0.8※2 |
年齢 | C(mg) | ||
---|---|---|---|
男性 | 1~9 | 40~70 | |
10~17 | 85~100 | ||
18以上 | 100 | ||
女性 | 1~9 | 40~70 | |
10~17 | 85~100 | ||
18以上 | 100 | ||
妊婦 | +10※2 | ||
授乳婦 | +45※2 |
※2:対象年齢の目安量(推奨量)にこの値をプラスする。
詳しくはこちらの資料でご確認下さい。
注意するべきはビタミンC
糖質制限の第一人者である江部康二先生によると、江部先生が提唱するスーパー糖質制限(PFc-1に相当)を実践している場合、不足に気を付けるべきなのはビタミンCに限られるとの事です。
例えばビタミンCは、野菜や海苔などに豊富です。
果物にもビタミンCは豊富ですが、
糖質制限食では少量摂取ですので野菜や海苔を食べないと、
ビタミンCが不足するので注意が必要です。
他のビタミンは、スーパー糖質制限食で不足することは、まずありません。http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-4211.html
糖質制限食は低糖質・高タンパク・高脂質が特徴ですから、そういった食品(肉や魚、卵など)を積極的に取り入れていれば大抵のビタミンは十分に摂取できるという事ですね。
ビタミンCが豊富な野菜には以下のようなものがあります。
- ブロッコリー
- カリフラワー
- 各種ピーマン
- パセリ
- さやえんどう
- 菜花
このように、いわゆる緑黄色野菜に多く含まれています。
こういった食品をしっかりと摂取していれば、ビタミンC不足となる事はないでしょう。
ただし注意点として、ビタミンCは水溶性ビタミンですから、水に溶けやすい性質があります。
さらに脂溶性ビタミンと比較して加熱処理で失われる割合が大きいため、できるだけ生に近い状態で摂取する事が効果的です(生食に向かない場合は「茹でる」よりも「蒸す」などが効果的)。
サプリメントは非推奨
糖質制限食で不足する可能性があるビタミンCをサプリメントで補強しようと考える方いらっしゃるでしょうが、サプリメントから摂取するビタミンは食品から摂取する場合に比べて明らかに有効性が下がる事が実証的には明らかとなっています。
その原理までは現状不明であるようですが、実際問題としてサプリメントによって補充される栄養素は食品によって得られるものと比較して効果が有意に低下する事は確かであるようです。
さらにはビタミンCのサプリメントを摂取することで様々な弊害が発生する可能性も示唆されています。
以上 の 話 を まとめる と、 まず ビタミン C の サプリ には 目立っ た 効果 が なく、 しかも 白内障 や 虫歯 の リスク が あり ます。 白内障 リスク について は まだ ハッキリ し ません が、 いずれ に せよ ビタミン C は、 野菜 や フルーツ から 摂れ ば 十分 でしょ う。
created by Rinker¥679 (2022/04/09 20:14:56時点 Amazon調べ-詳細)
この本によると、ビタミンCのサプリを摂取する事による効能として目立った効果はなく、むしろ白内障や虫歯のリスクを高めてしまう可能性すらあるとの事です。
こういった点を考慮しても、やはりビタミンCは食物から摂取するべきだと言えるでしょう。
糖質制限実戦者はビタミンCが少量で済む可能性
糖質制限を実践している人は、糖質過剰摂取である一般的な人と比較してビタミンCの必須量が少量で済むのではないかと江部先生が考察しています。
大航海時代の船員にビタミンC不足による壊血病の死者が続出したのに対して、
イヌイットやマサイ族にはそれが無かった理由について、
私は「糖質制限食を実践している者は、ビタミンCの必要量が少なくて済むのではないか」という仮説を持っています。
糖質制限食実践中の人は、高血糖や高インスリン血症という酸化ストレスリスクが極めて少なくなります。
ビタミンCの主要な作用の一つは抗酸化作用で、体内の活性酸素を消去してくれます。
伝統的食生活を送っていた頃のイヌイットやマサイ族は、「スーパー糖質制限食」を実践している状態なので、
酸化ストレスが極めて少なくなります。
結果としてビタミンCの必要量も、糖質を食べている人(大航海時代の白人の船員たちのような)に比べると
かなり少量で済んだ可能性があります。http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-5023.html
糖質制限をしている人は酸化ストレスが少ない分、ビタミンCの抗酸化作用にそこまで頼らなくても良いのではないかと言ったお話ですね。
言い換えれば、糖質を過剰摂取しているからこそビタミンCが多量に必要となっているという事ですが、これは非常に頷ける仮説ではないでしょうか。
そう考えた場合、ビタミンCを全く摂取しない事はリスクを伴うのでお勧めできませんが、糖質制限実践者は緑黄色野菜を一定量摂取している分には、ことさらビタミンについて意識せずとも良いのかも知れません。
緑黄色野菜を意識的に摂取すれば十分
ここまでの話をまとめると、糖質制限を実践している人にとってビタミン不足に陥らないように気を付けるべき事は、「緑黄色野菜を意識的に摂取する」事だと言えます。
さらに言えば、比較的不足しやすいと思われるビタミンCをサプリメントで摂取する事は推奨できませんので、ビタミンCが豊富な野菜を適量、意識的に摂取するだけで十分だと言えるでしょう。
適量とはどれぐらいか?という点が気になる所だと思いますが、ビタミンCの推奨摂取量が成人で100mg/日となっていますから、これに相当する量を意識的に摂取すれば良いという事になります。
例えば「茹でたブロッコリー」であれば100gあたりに55mg程度のビタミンCが含まれているとの事(出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂))ですから、200g程度の茹でブロッコリーを食べれば十分という事になります。
さらに言えば糖質制限実戦者はビタミンCの必要量が少量で済む可能性も示唆されていますから、ことさら多量に摂取せずとも、多少意識的に野菜を摂取する意識を持っておく程度で問題ない可能性も高いと言えるでしょう。
PFcメソッドとしての結論としては、「緑黄色野菜を意識的に摂取するよう心がける程度で問題ない」とさせて頂きます。