糖質制限に対する理解が世間一般でも広がりを見せていますが、そんな中でも比較的挙げられやすい糖質制限のデメリットとして「筋肉が落ちる」というものがあります。
糖質制限をすると筋肉量が減少すると主張する方は少なからずおり、その理由も比較的納得できるものである事もあって広く信じられている話ではないかと思います。
そこで今回は実際の所はどうなのかについて詳しく説明して行きたいと思います。
糖質制限で筋肉量が減るのか?
結論から言えば、正しく糖質制限を実践していれば筋肉量が減少する事にはなりません。
正しく実践というのがどういった事かと言えば、「しっかりとタンパク質を多く含む食事を摂取する」事に他なりません。
糖質制限食の基本は、必要なエネルギーの大半をタンパク質と脂質で補う食事法ですから、糖質過多な食生活と比較しても相対的に高タンパク質な食生活となります。
そういった糖質制限食を正しく実践している分には、筋肉量が低下する事を心配する必要は全くないと言って差し支えありません。
しかし逆に言えばタンパク質が不足した食生活を送っていた場合には筋肉量を維持する事が困難になるとは言えるのですが、それは糖質制限に限らずあらゆる食事法に共通して言える事です。
むしろ糖質制限食は高タンパク高脂質低炭水化物な食事となるので、一般的な糖質過多な食生活に比べれば相対的に見て筋肉量を維持しやすい食事であるとすら言えるでしょう。
糖質制限で筋肉減少論の根拠
ではなぜ糖質制限を行うと筋肉量が減少するという話が囁かれるのかですが、その理由は『糖新生』にあります。
糖新生はグルカゴンの分泌を契機として行われ、ピルビン酸、乳酸、糖原性アミノ酸などからブドウ糖を生成する事になります。
こういった機能が備わっている事によって、人間は糖質を食物から摂取せずともブドウ糖不足に陥る事がないのです。
糖質制限で筋肉量が減少しない理由
糖質制限で筋肉量が減少するという主張の根拠が分かった所で、実際にはそうならない理由について考えて見ましょう。
先述の通り糖質制限を正しく実践する分には筋肉量が減少する事はありません。
なぜなら、「糖新生で消費されるタンパク質の量よりも多くのタンパク質を食物から摂取しているから」です。
糖質制限食は高タンパク質な食事となりますので、しっかりと必要エネルギーをタンパク質と脂質をメインとして摂取しようとしたら必然的に多くのタンパク質を食物から取り入れる事になります。

こういった分量のエネルギー(カロリー)を摂取する事を前提とした食事をタンパク質や脂質を主体として摂取するという事は、糖新生に必要なタンパク質を軽く上回る量を摂取する事になります。
『「糖質過剰」症候群』の著者である清水泰行先生のブログでは、以下のような説明がなされています。
糖質制限の反対派はいまだに「糖質制限をすると筋肉が減る!」と言っています。しかし、糖質制限では自ずと高タンパク……
つまり、糖質制限をした場合、高タンパク高脂質食になりますが、血糖値の維持のために糖新生が活発になります。その糖新生の増加がエネルギー消費量の増加につながっているのです。そして生産されたグルコースのエネルギーの内、3分の1程度が糖新生をするためのエネルギーとして使われる計算となります。
糖質制限では糖新生に意外とコストをかけていることがわかります。そしてエネルギー消費量は増加しますが、タンパク質はプラスバランスなので、しっかりタンパク質を摂っているのであれば筋肉が減少することはあり得ません。筋肉が減少するのはカロリー制限です。
しっかりと糖質制限食を実践していれば自然と高タンパク質食になりますから、糖新生によってタンパク質の消費量が増えるにしてもそれを上回る量を通常は摂取する事になるので筋肉量が低下するような事には基本的にならないと言って良いでしょう。
筋肉量を減らさないために必要な事
これは糖質制限食に限った話ではありませんが、重要なのはタンパク質をしっかりと摂取する事です。
これを怠っていては、たとえハードなトレーニングを積んでいたとしても筋肉量の減少を免れる事は出来ません。
人体を構成する基礎となる大部分がタンパク質で出来ています。
つまり、タンパク質をしっかりと摂取しないことには、筋肉にしろ骨にしろどんどん痩せ衰えて行くのです。
そして筋肉量や骨密度が減少したその上辺には中性脂肪ばかりがどんどん蓄積していく…というのが最悪の状態と言えるでしょう。
中性脂肪はしっかりと糖質制限を実践していれば自然と減ります。
その上で筋肉や骨密度を低下させないように、しっかりとタンパク質を摂取しましょう。