糖質制限食とスポーツ【運動と糖質】

糖質制限をしている人の中にも、スポーツを趣味や職業としている人がいる事と思います。

そうした場合、健康面を考えた場合には当然のように支持できる糖質制限食ですが、スポーツをする場合にはどうなのだろう?といった事を疑問に思う事もあるでしょう。

今回はスポーツと糖質制限の関係性、つまりは「糖質制限はスポーツをする上で不利になる事はないのか」といった点について説明して行きたいと思います。

ブドウ糖エネルギーとケトン体エネルギー

糖質制限を実践している方の体は主にケトン体をエネルギーとして活用する事で生命活動を維持しています。

それに比べると日常的に糖質過多な食生活を送っている方は、ブドウ糖をエネルギーとして活用している割合が高くなっています(その場合にもケトン体がエネルギーとして使われていないわけではありませんが)。

スポーツを行う上では基本的に筋肉を酷使する事になりますから、筋肉の原動力として体に蓄えられているグリコーゲン(貯蔵されるブドウ糖)がパフォーマンスに与える影響の大きさが示唆されており、「スポーツを行う上ではブドウ糖エネルギーが重要な役割を果たすのではないか?」といった意見が根強く存在しています。

しかし近年、スポーツの性質によってはブドウ糖エネルギーよりもケトン体エネルギーの方がより高いパフォーマンスを発揮できる事が分かって来たのです。

有酸素運動=ケトン体、無酸素運動=ブドウ糖

スポーツ選手が糖質制限を行う場合に良く言われる話として、「パワー系競技では糖質系エネルギー(グリコーゲン)がより重要な役割を果たすので糖質を摂取した方が良い」というものがあります。

糖質制限の第一人者である江部康二先生のブログでも以下のような説明がなされています。

自転車のアスリート8名の研究で、ケトン食を摂取した1ヶ月と混合食を摂取した1ヶ月で、それぞれデータをとって、比較した研究です。

結論は、有酸素運動(この研究では自転車競技)において、低強度~中等度の強度トレーニングなら、ケトン食は混合食(普通食)より優位であるけれど、最高強度のトレーニングでは、優位は逆転するということです。

これは、中程度の強度のトレーニングなら、ケトン食で脂肪酸代謝が活性化しているので、それをエネルギー源として筋肉は混合食(普通食)の時より効率的に活動できるということです。

この結論は、私の印象とも一致しています。

このことを考慮すると、有酸素運動が主のマラソンやトレイルランなどでは、ケトン食を実践していると、筋肉はしっかり「脂肪酸-ケトン体」を主たるエネルギー源として使って、中等度の強度の運動で走り続けて、ラストスパートだけは、「グリコーゲン-ブドウ糖」をエネルギーに使って無酸素運動で最高強度の運動で終了というパターンが可能です。

http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-4133.html

一般的なスポーツ(有酸素運動)においてはケトン体エネルギーを活用した方が高いパフォーマンスを期待できる一方で、最強強度のスポーツ(無酸素運動)ではブドウ糖エネルギーを活用した方がパフォーマンスの向上につながるという論文が存在するとの事です。

無酸素運動を主とする競技とはつまりパワー系の競技(ウェイトリフティングなど)であり、その他多くのスポーツは基本的には有酸素運動を主とするものです。

つまり無酸素運動を主とするような限られた種目を除けば、多くのスポーツではケトン体エネルギーを活用した方が高いパフォーマンスを期待できるという事ですね。

マラソンにカーボローディングは不要?

持久力が重要とされるようなスポーツ(マラソンなど)では、競技の時点で通常よりも多くのグリコーゲンを体内に貯蔵する事を目的とした栄養摂取方法としてカーボローディングというものがあります。

カーボローディングとは、運動に必要なエネルギーとして効率が良いと思われているブドウ糖エネルギーを最大限に活用するべく、競技当日から逆算して数日間はグリコーゲンの消費をおさえ(トレーニングを減らし)つつ大量の糖質を摂取する事でグリコーゲンを最大限に蓄積しようとするものです。

現在でも多くのアスリートが実践している競技へ向けた体調管理法であるようなのですが、これに関しては必ずしも効果的ではないという意見もあるようです。

糖質制限に関する著書で有名な清水泰行先生は、ご自身がマラソンランナーであるという視点を踏まえつつ以下のようにカーボローディングへの疑問を投げかけています。

カーボローディングに対する疑問

1.カーボローディングすればグリコーゲン量は本当に増えるんですか?

2.もしグリコーゲン量が増えたとして、それはマラソンに有利なことなんですか?

3.カーボローディングは安全なんですか?

~中略~

ある研究ではグリコーゲン量が少ないほど脂肪をエネルギーにする割合が高くなるという結果が出ています。

せっかくグリコーゲンをカーボローディングで増やしても、それを使う比率が高くなったら、メリットはないと思います。

また、疲労困憊で走れなくなったランナーのグリコーゲンは枯渇しておらず、まだ数十%残っていたなんて書いてあるものもありますよね。

また、中枢の疲労に関係のある物質が増えると、脂肪をエネルギーにする割合が多くなるなんていう研究もあります。

つまり、複雑すぎてわからないことばかりなんです。

個々の人それぞれでも違います。

それをわかったことかのように説明している人はいっぱいいます。信じるかどうかはあなた次第ですが。

http://promea2014.com/blog/?p=431

詳しくは元のブログ記事をご覧頂ければと思いますが、カーボローディングが実際に有用なものであるのか、さらにはその健康面での安全性について警笛を鳴らしておられます。

先ほど触れたように、有酸素運動におけるパフォーマンスにおいてはブドウ糖エネルギーよりもケトン体エネルギーの方が優位であるという論文も存在しています。

マラソンのような持久力が求められる競技に関しては少々事情が異なる点もあるのかも知れませんが、少なくとも「マラソンにはブドウ糖エネルギーが必須かつ最適」といった認識を裏付けるだけの根拠は意外と乏しいようです。

スポーツに糖質は(基本的には)不要

ここまで説明してきたように、多くのスポーツにおいては糖質の摂取は不要であると思われます。

ただし例外的なケースとして、無酸素運動を主とするような競技に関してはブドウ糖エネルギーを多く活用した方がパフォーマンスが向上する可能性が示唆されておりますので、そういったタイプの競技を行っている場合には競技に先駆けて糖質を摂取するメリットが大きい可能性があります。

一方でその他多くの有酸素運動を主とするタイプのスポーツに関しては、ケトン体エネルギーを活用した方が高いパフォーマンスを発揮できる事が示唆されておりますので、競技の有無に関わらず糖質制限を日々実践する事をお勧めします。

スポーツとエネルギーの関係についてはまだまだ発展途上な分野ですので、より適切なバランスといったものが今後明らかとなってくる可能性はあります。

しかし一つだけ確かなのは、競技の成績如何を問わないのであれば普段の食生活としては糖質制限食の方がより健康的であるのは明白ですので、競技の成績を横においておくのであれば当然の事として糖質制限食がお勧めであるという事です。