糖質制限を実践している方はもちろん、これから実戦しようとしている方の中にはMCTオイルというものの名前を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。
糖質制限ダイエットの中でもMCTオイルが取り上げられる事も多い事でしょう。
糖質制限と深い関係にあるMCTオイル、そしてケトン体との関係について説明して行きたいと思います。
MCTオイルとは?
MCT(Medium Chain Triglyceride)は中鎖脂肪酸とも呼ばれており、一般的な油(オリーブオイル、サラダ油など)に多く含まれる長鎖脂肪酸に比べて分子の長さが短い(約半分)脂肪酸の事です。
分子が短いという特徴から、MCTオイルは消化吸収が早く一般的な油に比べてケトン体を生成しやすい事が最大の特徴となっています。
MCTはココナッツオイルやパームオイルに多く含まれており、その他にも母乳や牛乳などにも含まれています。
MCTオイルとはそういったMCTの成分を抽出した、MCT100%のオイルとなっています。
ケトン体は糖質制限を実践している方にとっては、糖質由来のエネルギーに代わるものとしてお馴染みだと思います。
ケトン体エネルギーは糖質由来のエネルギーに比べて極めて効率の良いエネルギー源である事がわかっており、なおかつ体への負担も少ない点も大きなメリットと言えます。
MCTオイルは一定以上に糖質を摂取している方にとってもスポット的にケトン体を増加させたいような場合に多少なりとも有用に働きますが、やはり糖質制限を実践している人が活用する事で真価を発揮するものと言えます。
PFcメソッドで提唱するPFc-1に相当するような糖質制限(1日2食推奨、各食事の糖質量20g以下)を実践していれば自然とケトン体をエネルギー源として活用するようになっていきますが、よりケトン体を効果的に活用したい方や、やや緩めた糖質制限(PFcメソッド的にはPFc-2など)を実践しつつもケトン体を活用したい方がMCTオイルを活用する事で、よりケトン体の生成・活用を促進する事が出来ます。
MCTオイルは元々、脳神経系疾患や脂質異常症に関わるような病気の治療目的で活用されているものでした。
そして現在では糖尿病を始めとした様々な疾患への治療目的での活用が注目されています。
中鎖脂肪酸 は 40 年 の 間、 てんかん や 家族 性 高 コレステロール 血 症 の 患者 さん の ほか、 手術 後 の 患者 さん や 未熟児 への 栄養 補給 などの 治療 に 使わ れ て き た 油 です が、 90 年代 に 入り、 一般 食用 油 として 生活習慣病 予防 への 利用 などにも 広がり を みせ て き まし た。 ダイエット 時 や、 高齢者 や スポーツ 時 の エネルギー 補給 に 用い られ て いる ほか、 今後 注目 さ れる のが、 糖尿病、 認知症 や アルツハイマー 病、 パーキンソン 病、 がん、 うつ といった 分野 での 活用 です。
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糖尿病以外にも認知症・アルツハイマー病・パーキンソン病といった脳神経に関わる疾患や、がん・うつ病といったものにも活用が注目されているとの事で、様々な病気の治療で今後も活用が広がっていく可能性が高いと言えます。
こういった側面は、まさに糖質制限というものが各種病気の治療として取り入れられて行っている事と印象が被る方も多いと思います。
実際問題として糖質制限にしろMCTオイルの活用にしろ根源となっている問題は糖質の過剰摂取ですから、この二つが有効に働く理由の根は同じだと言えるでしょう。
糖質制限+MCTオイル
糖質過剰な食生活を送っている方がMCTオイルを活用した場合にも一定のケトン体生成効果が期待できるようですが、その効果は極めて限定的であると言わざるを得ません。
MCTオイルによるケトン体生成・活用の恩恵を十分に得る為には、糖質制限を実践している事が大前提として必要となります。
糖質制限を実践する事で体内でブドウ糖が枯渇すると、人体はケトン体を主要なエネルギーとして活用し始めます。
こういった特徴が前時代的な医学的常識として「ケトン体は飢餓状態で体内に増える危険な物質である」という認識に繋がっていました。
しかし実際にはケトン体こそが人間にとって本来的なエネルギー源であり、ケトン体をエネルギー源とした場合の方がブドウ糖をエネルギー源とするよりも効率が良く、なおかつ人体にとって負担が少ない事が近年次々に判明してきています。
ブドウ糖をエネルギー源にするような生き方は、人体の仕組みから言えば本来想定されていないものだと推定できます。
それはブドウ糖の摂取によって引き起こされる高血糖が人体にとって如何に多くの弊害を生み出しているかを見るだけでも明らかでしょう。
それと比較してケトン体をエネルギー源とする事は、人体にとって負担が少なく、むしろ保護作用も確認されています。
更には糖質由来のブドウ糖エネルギーに比べて、脂質由来のケトン体エネルギーはエネルギー効率といった側面から見ても断然有利です。
こういった事実から判断すれば、「人類はケトン体をメインエネルギーとして生きるべき」だとする結論は当然の成り行きではないでしょうか。
糖質制限を実践しつつMCTオイルを活用する事で、より効果的にケトン体エネルギーを日常的に活用する事が可能となりますから、それはエネルギー効率という面から見ても、さらには人体への負担という面から見ても推奨されるべき事です。
MCTオイルの一日あたりの摂取量
MCTオイルを一日にどの程度摂取すれば良いかに関しては、明確な基準はなく、その人が求めるもの次第という事になります。
例えばケトン体を極めて高い数値で生成する事で脳神経などの保護作用を発揮させるための食事療法としてケトン食というものが有ります。
ケトン食を実践する場合には、MCTオイルを一日に60g以上を複数に分けて摂取するような事になるようですが、これはあくまでも治療目的の食事です。
こういった治療目的のケトン食に関しては、ケトン食に関してしっかりとした知識を持った医師や栄養士の指導のもとに実践する事が望ましいと言えます。
一方で糖質制限の一環としてMCTオイルを取り入れるような場合であれば、ここまでの高ケトン体値を実現する必要はありませんので、もっと摂取量を減らして問題ないでしょう。
糖質制限を実践している方がMCTオイルを活用する理由としては、効率の良いエネルギー補給という意味合いが強いものと思われます。
ケトン体の安全性を証明なさった事で有名な産婦人科医の宗田哲男先生は以下のようなバターコーヒーダイエット(MCTオイル入り)を提唱なさっています。
- ①初級コース:朝食「バターコーヒー」/昼食「通常食」/夕食「主食抜き食」
- ①初級コース:朝食「バターコーヒー」/昼食「主食抜き食」/夕食「主食抜き食」
- ①初級コース:朝食「バターコーヒー」/昼食「バターコーヒー」/夕食「主食抜き食」
宗田先生の推奨するバターコーヒーのレシピによると、一回あたりのMCTオイル量は小さじ2杯(10ml)~大さじ1杯(15ml)との事です。
さらに宗田先生の別著書では、一日のMCTオイル摂取量目安を以下のように設定しています。
本書で推奨するMCTオイルの摂取量の目安は、1回大さじ1または15mlを上限に、一日1~3回です。
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この情報を参考とさせていただくと、、一日に小さじ2杯(10ml)から大さじ1杯(15ml)程度を1~3回摂取するのが適量とするのが妥当かと思われます。
これに関しては正解といったものを導き出す事が現状では困難なのですが、MCTオイルは一般的な油と比較すれば高価なものですから、そういった点も考慮した場合にはこの程度の量が適量かと思われます。
PFcメソッドとしては、「糖質制限実践者がMCTオイルを取り入れる場合、一日に大さじ1杯(15ml)を2回程度を目安として摂取する事を推奨する」といった見解とさせて頂きます。
なおMCTオイルの摂取は宗田先生が推奨なさっているようなコーヒーにMCTオイルを混ぜる方法でも結構ですし、そのままMCTオイルだけを飲んで頂いても結構です。
あとは料理にかけて頂いても結構ですが、MCTオイルをしっかりと摂取できるようにご注意下さい(大半がお皿に残ってしまうような方法はお勧めできません)。
一つ注意して頂きたいのは、高温で調理するようなケース(フライパンにひくなど)の油としてMCTオイルを使う事はMCTオイルの性質を変化させてしまう危険性があるのでお勧め出来ません。
ですので基本的には飲み物に溶かすか、料理にかけて使うか、そのまま飲むかといった方法をお勧めします。
MCTオイルの摂取時間帯
MCTオイルをどのような時間帯に摂取するのが効果的かに関しては、宗田先生はバターコーヒーダイエットについて以下のように説明なさっています。
この ダイエット の ポイント は、 朝 と 夕食 の 主食 を 抜く こと で 蓄積 脂肪 を 燃焼 さ せる ケトン 体 回路 が 作動 する 時間 を 集中 し て 確保 する こと です。 初級 コース で ダイエット を し た 場合、 朝食 は バター コーヒー だけ、 昼食 は 普通 の 食事 を し て、 夜 は 主食 抜き の 食事 という プログラム です。 この 場合、 例えば、 主食 を 摂ら ない 夕食 を 前日 20 時 と すれ ば、 翌日 の 朝食 は 低 糖質 の バター コーヒー のみ です から、 前日 の 夜 から 昼食 の 普通 食 の 直前 まで、 血糖値 を 上げる こと なく ケトン 体 を 出す こと が でき ます。
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糖質を摂取するのと同時にMCTオイルを摂取するよりも、ケトン体回路が活発になりやすい状況でMCTオイルを活用した方が効果的であるようです。
糖質制限を実践なさっている方でも、体内でブドウ糖が枯渇しているような状況でMCTオイルを活用する事で、より効果的にケトン体を生成する事が出来るようですので、どちらかと言えば間食のような形でMCTオイルを取り入れるのが効果的であるようです。
PFcメソッドで言うところのPFc-2(一食だけ糖質緩和食を摂取)を実践している場合なら、糖質緩和食から遠い時間帯にMCTオイルを摂取するのが望ましいと言えるでしょう。
糖質制限+αにオススメなMCTオイル
ここまで説明してきたように、MCTオイルは糖質制限とセットで活用する事で高い効果を得られるものだと言えます。
しっかりと糖質制限を実践していれば自然とケトン体をエネルギー源として活用するようになりますが、そんな中でも効率の良いエネルギー源としてMCTオイルを取り入れるのも良いでしょう。
さらには糖尿病や各種疾患(認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、がん、うつ病など)の治療といった点も意識するのであれば、しっかりとした糖質制限+MCTオイルでより効果的なケトン体の恩恵を得られる事でしょう。
いくらMCTオイルを摂取したとしても、糖質過剰な食生活を送っていたのでは効果は限定的です。
MCTオイルのポテンシャルを最大限に発揮するためにも、しっかりと糖質制限を実践した上でMCTオイルを効果的に活用するように心がけましょう。