『ロカボ』とは?その定義と問題点について

一口に糖質制限と言ってもその定義や方法論は様々です。

当サイトで推奨しているPFcメソッドの定義は、糖質制限の第一人者であられる江部康二先生の糖質制限(便宜上当サイトでは江部式糖質制限食とさせて頂いてます)を参考としたものとなっていますが、それ以外にも様々な方が糖質制限の方法論を提唱なさっています。

その中でも特に商品展開などで広く普及している概念としてロカボというものがありますね。

今回はこのロカボについて説明すると同時に、当サイト的なロカボに対するスタンスについても触れて行きたいと思います。

『ロカボ』とは?

ロカボの定義についてはロカボオフィシャルサイトをご覧頂くのが一番だと思いますが、以下のように提起されています。

「おいしく楽しく適正糖質」それがロカボです。
糖質は三大栄養素の「炭水化物」に含まれていて、
血糖値を上げる原因になっています。適正な糖質摂取を心がけることで
血糖上昇を抑えることができます。

「ローカーボ」ではなく「ロカボ」。
極端な糖質抜きではなく、
おいしく楽しく適正糖質を取ることを推奨しています。

「楽しく続けたくなる」がロカボのモットー。
無理なく日常生活に取り入れられることが基本です。
今までのカロリー制限では、「どれを食べてもいい、でも全部減らしなさい」という考え方でした。
しかし、ロカボでは「どれを食べてもいい、でも工夫をしなさい」と考えるのです。

より具体的なロカボの定義は以下のようになります。

  • 一食の糖質量は20~40g
  • デザートは10g以下
  • 1日の合計糖質量は70~130g
  • 最低限の糖質摂取量(70g)を設定

ロカボを一言で言えば「緩めの糖質制限」という事になります。

ロカボの最も特徴的な点は、糖質の最低摂取量を設定している点にあります。

江部式糖質制限食や当サイトで推奨するPFcメソッドでは糖質の最低摂取量というものは設定しておらず、基本的に糖質摂取量は少なければ少ないほど良いというスタンスです。

しかしロカボに関しては一日に最低でも70gの糖質を摂取する事を推奨しています。

この点がロカボが他の糖質制限手法と比較した場合に異質な点だと言えるでしょう。

ロカボが最低糖質量を設定する理由

なぜロカボは糖質の最低摂取量を設定しているのでしょうか。

この点に関してはロカボの提唱者である山田悟先生の著書に以下のような記述が見受けられます。

普通の糖質制限と違うのは、下限を切ることによって、ケトン体が出てくるような極端な低糖質状態になることを避けているということです。これによって、ケトン体分泌に伴う血管内皮細胞の障害などを除外できます。

山田先生の考えとしてはケトン体が高いレベルで生成されるような糖質制限状態は体にとって良くないという認識があるようです。

この本が出版されたのは2015年の11月ですから、その時点ではケトン体の安全性がまだ広く認知されていなかったという事情もあるかと思います。

しかし今現在でもロカボにおいて糖質の最低摂取量を設定し続けているという事は、やはり糖質の摂取が一定以下のラインまで達する厳格な糖質制限には反対という立ち位置自体に変わりはないようです。

ひょっとすると「何事も極端なのは良くないのではないか」といった一般的な価値観に寄り添う意味で、「極端な糖質制限は良くない」というスタンスを打ち出している面もあるのかも知れませんね。

当サイトPFcメソッドの認識としては、ケトン体は極めて安全かつ効率の良いエネルギー源であり、ケトン体が高値となる事は望ましい生理現象であると考えています。

ケトン体に関してはこちらの記事をご覧ください。

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緩い糖質制限のメリット

ロカボ=緩い糖質制限のメリットとは、何と言っても糖質をある程度摂取しながら実践できる点にあるでしょう。

PFcメソッドの基準に照らし合わせると、一食あたり20gを超えるような食事を取る事が出来なくなってしまいますが、ロカボであれば40gまでの余裕があります。

40gまで糖質摂取の猶予があれば、ざるそばを150g程度であれば食べる事が出来ますし、食パンを一枚食べる事も問題ありません。

20g以内という制限では食事の選択肢に入らないものも食べる事が出来るので、献立のバリエーションが随分と広がりますね。

緩い糖質制限のデメリット

対してデメリットとは何かと言えば、これは単純に健康面での効果が『江部式糖質制限スーパー糖質制限食』や当サイトの『PFc-1』と比較した場合には落ちてしまうという点です。

糖質の制限度合いが緩くなった分、健康面での効果も緩くしか発揮されないのは当然と言えば当然の話です

さらに言えば、糖質制限を糖尿病の治療目的で行う事を考えた場合には、ロカボ基準での糖質摂取では食後高血糖を発生させてしまう可能性が高く、糖尿病合併症の予防といった観点から言えば効果はかなり薄く限定的なものとなってしまうでしょう。

ロカボと商品開発の関係

ロカボがなぜ最低糖質量といった概念を設定するかについて、厳格な糖質制限をした場合のリスクを考慮したという理由以外の面を考えて見ると、「商品展開のしやすさ」といったものが挙げられます。

例えば当サイトで推奨しているPFcメソッドのような「糖質は少なければ少ないほど良い」というスタンスだと、糖質をある程度含んでしまうような食品に関しては当然推奨できません。

例えばPFcメソッドでは一食の糖質量は20g以下を推奨していますから、一つあたりの糖質量が30g程度になってしまうような食品の場合、推奨することは出来ません。

しかしロカボであれば、一食の糖質量を20~40gに設定しているため、一つあたりの糖質量が30g程度になってしまうような食品も「食べて良い食品」として推奨できます。

ロカボのメリットで触れたように食事の選択肢が広がる事により、そこに向けた商品開発の選択肢も大きく広がると言えるでしょう。

このようにロカボという概念は、糖質制限を実践する人にとってだけではなく、糖質制限関連の商品開発を行う企業側にとってのメリットが非常に大きいスタンスだと言えます。

公式ページで紹介されている『ロカボパートナー』に多数の企業が名を連ねているのも、こういったロカボの持つ企業活動との親和性があって初めて実現しているものだと言えるでしょう。

ロカボオフィシャルサイト

「おいしく楽しく適正糖質」。極端な糖質抜きではなく、緩やかな糖質制限を推奨する「ロカボ」の公式WEBサイト。ロカボの解説…

当サイトの『ロカボ』に対するスタンス

PFcメソッドとしては、糖質制限の一手法としてのロカボというスタンスを推奨していません

理由は以下のようになります。

  • 最低糖質量の設定に正当性を見出せない
  • 一食あたり40gの糖質摂取を容認した場合には糖尿病合併症の予防が困難になる
  • ロカボを実践するのは意外と難しい
  • ロカボレベルの糖質制限では実際には危険域に達するような糖質量を摂取しているケースが想定される

最低糖質量の設定に正当性を見出せない

当サイトとしては糖質制限によるケトン体高値を肯定しており、ケトン体高値を実現しないための最低糖質量設定というスタンスであるロカボとは、その点で明確に相反しております。

当サイトが多く参考とさせて頂いている糖質制限の第一人者である江部康二先生も最低糖質量といったものは設定しておらず、糖質は少なければ少ないほど良いというスタンスです。

一食あたり40gの糖質摂取を容認した場合には糖尿病合併症の予防が困難になる

一食あたり40gまでの糖質摂取を容認してしまうと、糖尿病の場合であれば有意な食後高血糖を発生させてしまう可能性が高いと言えます。

その結果、糖尿病合併症を発症させてしまうリスクが一食あたり20g以下の糖質制限に比べると格段に高まるものと思われます。

こういった理由から、一食あたり40gまでの糖質摂取を容認するスタンスを当サイトとして推奨する事は出来ませんし、ロカボの場合はそれを一日三食すべてで容認しているので、なおの事受け入れる事は出来ません。

ロカボを実践するのは意外と難しい

ロカボの場合、一食で20~40g、一日で70~130gまでの糖質摂取を容認していますが、こういった数値の把握はそれほど簡単なものではありません。

例えば一食の糖質あたりの糖質量を極力少なく(限りなくゼロに近づける意識)しようとした場合、結果的に10g程度の糖質を摂取してしまったとしても当サイトで推奨している基準(一食あたり20g)に収まりますし、これがうっかり20gに迫る量まで摂取してしまったとしても同様に許容範囲内に収まります。

しかしロカボの場合、少なすぎても駄目ですから、常に20~40gの狭い範囲内の糖質量に合わせる必要があります。

そのためには食品の糖質量を逐一細かく把握しておく必要があり、非常に面倒な事になります。

「とにかく糖質が少なければ良い」というわけではなく、かといって「多すぎるのも駄目」ですから、しっかりと20~40gの範囲に狙いを定める必要がある事を考えれば、ロカボを正しく実践する事は意外と困難だと言わざるを得ません。

ロカボレベルの糖質制限では実際には危険域に達するような糖質量を摂取しているケースが想定される

当サイトで推奨しているような一食あたり20g以内という基準であれば、うっかりそれをオーバーしてしまったとしても精々30g、最悪でも40g以内には収まる可能性が高いでしょう。

しかし40gを上限としつつ20gという下限まで設定されていると、上限一杯の40g程度を狙った結果として、実は50gや60g、下手をすると70gといった糖質を摂取してしまっている可能性も決して無視できないレベルで存在していると思われます。

一日トータルで見ても、ロカボ基準の食事を取っているつもりで実は毎食10gずつ糖質量をオーバーしていた場合、一日トータルで150gを超える糖質を摂取しているようなケースも現実的に存在する事でしょう。

これでは糖質制限の効果は大きく差し引かれてしまいますし、糖尿病の治療目的であれば合併症を発症させてしまうリスクを常に抱える事にもなるでしょう。

ロカボで設定されている上限値には余裕がないので、きっちりと実践できていれば一定の効果は見込めるでしょうが、少しでもはみ出していると途端に糖質制限としての効能に疑問符を付けざるを得ないレベルまで落ちてしまう点は注意が必要です。


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