『ケトン体』とは何か、その効用について

糖質制限を行う上での重要なキーワードにケトン体という存在があります。

糖質制限を実践している人の体内では、このケトン体が重要な役割を果たしています。

ケトン体とは何なのか、糖質制限との関係性などを解説していきます。

ケトン体とは

ケトン体とは、『アセトン』、『アセト酢酸』、『β-ヒドロキシ酪酸』の総称であり、人が糖質の摂取を一定以上に制限している状況下において体内で生成される物質です。

ケトン体は体内で多くの細胞にとってのエネルギー源となる物質で、特に糖質制限を実施している人にとっては主要なエネルギー源の一つとなっています。

かつてはブドウ糖が枯渇したような飢餓状態において体内で増加する危機回避的な物質であると認識されていましたが、産婦人科医の宗田哲男先生が胎児の主要なエネルギー源はケトン体である事を発見した事を契機として徐々に認識が改められ、今ではブドウ糖よりも効率の良いエネルギー源としての認知が進んでいます。

「ケトン体はヒトの基本的エネルギー源」

宗田先生が著書で繰り返し提言しているように、人類は本来ケトン体をメインエネルギーとして活動していたと思われます。

それが農耕の始まりと共に穀物を多量に摂取するようになったことでブドウ糖を常時多量に摂取するようになり、「人間の主要なエネルギー源はブドウ糖である」かのように錯覚してしまったのです。

ケトン体を端的に表現すれば、「脂肪を原料とするエネルギー源」とも言えます。

ブドウ糖は体内に蓄えておける量に限りがあり、余分なブドウ糖は中性脂肪に変換されて体内に蓄積されるのですが、それが肥満の原因となっています。

ケトン体をメインエネルギーとして生活して行けば、中性脂肪を分解して得られる脂肪酸を原料としてケトン体を生成する仕組みから、結果的に肥満の解消にも繋がります。

むしろ本来、ブドウ糖の過剰摂取で脂肪を蓄積する事は、蓄積した脂肪をエネルギーとして後に活用する(ケトン体に変換する事でエネルギー源とする)事を想定した機能だと見るのが自然でしょう。

そう考えなければ、余剰なブドウ糖をわざわざ脂肪へ変換して体に蓄積しておかなければいけない理由が説明できません。

ケトン体は危険?

かつてはケトン体が飢餓状態で増える物質で有る事、さらにはケトアシドーシスと呼ばれる血中ケトン体濃度が高まる事で発生すると思われていた症状の存在から、「ケトン体は危険」という認識が医学界の常識でした。

しかし近年では先ほども触れたようにその認識が改めてられてきており、ケトン体は人間本来のエネルギー源であるからこそ飢餓状態で上昇するのであり、ケトアシドーシスは血中ケトン体濃度が上昇したから発生するものではない(血中ケトン体濃度が上昇する現象はケトーシスと呼ぶ)といった事も明らかになっています。

医師の中には糖質制限に対して強固に反対する人が今でも一定数存在していますが、その際たる要因は過去の医学的常識として「ケトン体は危険」であるという認識が一般的にあったことで、そういった古い認識をアップデートできていない医師も少なくないという事に他なりません。

もちろん医学的な常識は次々に新しくなっていくので、「ケトン体はどれだけ増えようが絶対的に安全である」と未来永劫において言い切れるわけではありませんので常に一定の懐疑心は必要だと思われますが、現状の認識としては「ケトン体は人間の体にとって基本的に安全かつ効率の良いエネルギー源である」とは言えるでしょう。

ケトン体のもつ神経保護作用

ケトン体をメインのエネルギーとして生活する事は肥満の防止や糖尿病治療の一環としてだけではなく、脳神経系の病気に対する治療や予防にも効果がある事が明らかになってきています。

アルツハイマー型認知症を「脳の糖尿病」とする医師もおり、その予防や改善にケトン体の活用が有効に働いているデータも次々と明らかになってきています。

その他にも『てんかん』の治療に対してもケトン食は活用されており、脳神経関係の疾患に対するケトン体の効用は今後も様々な場面で注目されていく事でしょう。

ケトン体で生きる事=より自然な生命活動

ここまで説明してきたように、ケトン体を主なエネルギー源として生きて行く事は人体のあらゆる面において負担の少ない、より自然な生命活動であるという事が言えるでしょう。

ブドウ糖を主なエネルギー源として利用している現代社会で発生している様々な病気の原因が、実はブドウ糖という「体にとって負担の大きいエネルギー源」に依存した生き方に起因しているのだろうと思われます。

そんな人間の構造から見て、より自然なエネルギー源であるケトン体を活用する生活、それを実現するのが糖質制限なのです。

糖質を原料としたブドウ糖で無理やり動かしていた体を、脂質を原料としたケトン体で自然に動かす事、それが結果的に健康な生き方へと繋がるのでしょう。