『糖新生』とは?その仕組みと誤解について【ブドウ糖(グルコース)の代謝・生産】

糖質制限を実践していると、食物から摂取する糖質は極わずかとなります。

しかし人間の体内ではブドウ糖しかエネルギーとして活用できない細胞も存在しています。

糖質制限をしているとそういった細胞が死んでしまうのではないかと心配になる人もいるかも知れません。

しかし実際にはそういった心配はありません。

なぜなら、人間の体内にはブドウ糖を新たに生成する機能が備わっているからです。

『糖新生』とは?

糖新生とは、人間の体内(肝臓)で行われているブドウ糖(グルコース)を生成する機能の事です。

人間の体にはタンパク質や脂質に由来する物質(ピルビン酸、乳酸、糖原性アミノ酸、グリセロールなど)からブドウ糖を生成する機能が備わっており、これによって人間の血糖値は常に適正な範囲内でコントロールされているのです。

血糖値が下がると(血中のブドウ糖濃度が下がると)体内では糖新生を活発化させて血糖値を上昇させる作用が働きますし、逆に血糖値が高い状態であれば糖新生は抑制されてそれ以上血糖値が上がらないように作用します。

このように体内でブドウ糖を生成する機能があるために、赤血球のようなブドウ糖しかエネルギーとして活用できない細胞にも常にエネルギーが行き渡る仕組みとなっているのです。

糖新生に関する誤解

糖新生が体内でブドウ糖を生成する機能の事である事はご存知でも、中にはその役割を誤解なさっている方も少なくありません。

その誤解とは、「糖新生は糖質の摂取が不足した時のみ作用する生理現象である」というものです。

これは誤りで、実際には糖新生は糖質を多く摂取している人の体内でも日常的に行われている事です。

例えば睡眠中などが代表的な例ですが、いくら糖質を多く摂取している人であっても常時糖質を食べ続けているわけではない場合がほとんどです。

空腹時にも血糖値を一定に保つために、体内では糖新生を行って低血糖状態にならないように調整しています。

糖質制限で痩せる一番の理由=糖新生

糖質制限をダイエットとして行う場合、その結果として痩せる効果が期待できる一番の要因は糖新生によって中性脂肪がエネルギーとして活用される事にあります。

人間の体には常に一定のブドウ糖が必要となりますから、それが不足する状況では糖新生が活発となります。

そうした場合、ブドウ糖を作り出す原料として体に蓄積した中性脂肪が活用されるので、その結果として痩せる事が出来るのです。

糖質制限ダイエットとはつまり、糖質の摂取を控える事で太りづらくなる(インスリンの働きで脂肪を蓄積するのを防ぐ)のと同時に、糖新生の働きで痩せるという二重の効果を期待するダイエット法なのです。

さらには脂肪由来のケトン体エネルギーの活用によっても中性脂肪が消費されますので、二重どころか三重の効果が期待できるのです。

糖新生こそブドウ糖獲得の主要ルート

現代社会では糖質過多な食生活を送る場合が多く、それが当たり前のように思われているのが現状です。

そういった状況では糖質制限を行って必要な糖質は糖新生によって確保するという考え方は、緊急回避的な印象を持たれる事も少なくないでしょう。

しかし人間の代謝を偏った視点を除いて見てみた時、糖新生が食生活に関わらず常に作用して血糖値の安定を図っている事からも分かるように、糖新生によってブドウ糖を適量だけ生産する代謝こそが本来の在り方であると考えた方が自然です。

人間の体は低血糖状態に陥らないようにするためのセーフティーネットは非常に強固に敷かれていますが、一方で高血糖状態への対応策はインスリンの作用に依存している状況です。

もし人間が常に糖質過多な食生活を送り高血糖のリスクにさらされ続ける事を想定しているのだとすれば、こんな脆弱な仕組みにはなっていないでしょう。

そういった面から考えて見ても、本来人間にとっては糖新生こそがブドウ糖を獲得するための主要なルートであると考えられるのです。