糖質制限を行う事で改善される代表的な症状は、高血糖です。
しかしそれ以外にも様々な面で良い効果を発揮するのが糖質制限なのですが、その中でも比較的隠れやすい存在として「低血糖」というものがあります。
低血糖には複数の原因がありますが、その中でも糖質制限によって劇的な効果が期待できるものとして「機能性低血糖症」があります。
今回はこの症状がどのようなものであり、どのような原理で発生するかについて説明します。
機能性低血糖症とは?
機能性低血糖症とは、血糖値の低下にともなって精神・身体に異常を来たす症状です。
症状の種類は多岐に渡りますが、例えば以下のようなものが挙げられます。
- 物忘れ
- 疲労感
- 眠気
- 集中力低下
- 動悸・息苦しさ
- 頭痛・めまい
- 鬱傾向
- 情緒不安定
- 筋肉痛
- 異常な空腹感
これらはあくまでも一例であり、機能性低血糖症の症状は本当に様々です。
機能性低血糖とはつまり、「あらゆる心身の不調」を引き起こす可能性があると言えるでしょう。
機能性低血糖症の原因
低血糖症の原因は基本的にはインスリンを多く注射してしまった場合や血糖値を下げる薬の効きすぎによるものですが、機能性低血糖症の原因は血糖値の上昇によって生じるインスリンの追加分泌が過剰に生じる事によります。
糖質の摂取によって血糖値が上昇すると、それを正常値に下げるためにインスリンが追加分泌されます。
しかしその分泌量が上昇した血糖値を正常値まで下げるために必要な分量以上に血液中に放出された場合、想定以上に血糖値が下がり過ぎる状態になります。
また一度に多くのインスリンが放出されるだけではなく、時間差でインスリンが追加分泌され続ける事によっても低血糖を生じる危険があります。
このようにインスリン注射や薬の効果によらず、糖質の摂取による血糖値の上昇に起因する生理現象によって生じるのが機能性低血糖症の特徴となっています。
機能性低血糖症の治療・対策
機能性低血糖症の原因は、糖質を多量に摂取する事による血糖値の上昇にあります。
血糖値を正常に保つためにインスリンが血液中へ放出されるわけですが、その量が正常値まで血糖値を下げる必要量よりも上回ってしまうと血糖値は下がり過ぎてしまいます。
つまり血糖値を急激に上昇させるような食事を取らなければ、多くの場合で機能性低血糖症を生じずに済むものと考えられます。
となれば実行するべき治療・対処方法は当然、糖質制限の実践という事になります。
糖質の摂取を控えて血糖値の乱高下を防ぐ事で、インスリンの過剰分泌による血糖値の下がり過ぎ(低血糖症)を発症せずに済みます。
インスリン注射や薬による低血糖症の場合は低血糖状態となってからブドウ糖を注入する治療が行われるのが一般的ですが、機能性低血糖症は自分の体の中で起こる生理現象に基づく低血糖症ですから、そもそもの原因となっている糖質の摂取による血糖値の上昇さえ抑制できれば問題ありません。
発見されづらい「機能性低血糖症」
機能性低血糖症は疾患としての知名度がそれほど高くないために、そのほかの疾患と誤解されるケースも多いものです。
機能性低血糖症で発症する心身の不具合は多岐に渡りますので、何かしらの体調不良を感じている場合、ひょっとしたらそれは機能性低血糖症である可能性は十分にあるでしょう。
特に閉経後の女性の場合だと、いわゆる更年期障害との混同も少なくないものと思われます。
更年期障害で現れるとされる症状と機能性低血糖症で現れる症状には類似性が高く、機能性低血糖症といった症状に対する認識が薄い場合、更年期障害として扱われてしまうケースも少なくない事が予想されます。
一般的に機能性低血糖症を発症しやすい人の特徴として、「痩せている人」という事が挙げられるようです。
日本肥満学会によると、BMI※が18.5未満の場合は痩せすぎであるとの事ですが、そういった数値となっている場合は機能性低血糖のリスクが上昇している可能性があります。
※BMI=【体重(kg)/身長(m)×身長(m)】
疫学的な視点で言えば、痩せすぎの方は少し体重を増やす事を心掛けることで機能性低血糖症のリスクやその度合いを緩和できる可能性があると見る事も出来るでしょう。